「なぜ」とは何か?

ロボットが赤ん坊のように自分で知識を獲得していくためには
ロボットが「好奇心」を持つように作っておかなければならない。
それにはロボットが「なぜ」という疑問を持たなければならない。
しかし、そもそも「なぜ」とはなんだろうか。

私の研究の目的は、記号処理プログラムを書くことなどではない。
脳は記号処理装置ではない。
しかし、記号処理装置は脳の動作の1つのよい近似モデルである。
そこで、まず最初に記号処理をベースに考えてみることにする。


「なぜ」にはいろいろな種類があるだろう。
例えば命題に対する証明を求めるのも「なぜ」の1つだろう。

「ソクラテスは死ぬ」という命題に対して「なぜ」と問われれば、
それに対する答え(証明)は
「人間は死ぬ、ソクラテスは人間、だからソクラテスは死ぬ」となる。

命題を証明するために追加すべき知識を求めるのも「なぜ」の1つだろう。

ロボットが「人間は死ぬ」という知識を持っているとき、
「ソクラテスは死ぬ」という命題に対してロボットが「なぜ」と問うならば、
適切な答えは「ソクラテスは人間だから」となる。

こういうプログラムを書くのは簡単だろう。
定理の自動証明と同じなので、
有限時間内で確実に「なぜ」に答えることは不可能だが、
たまたま答えが見つかれば答えてくれる。

相手の「なぜ」に適切に答えるためには、
相手が持つ知識と相手の推論能力を知っている必要がある。
ようするに相手の「心の理論」を持っていることが必要不可欠だ。

ロボット側が「なぜ」という質問をいつ発生させればいいのかという問題は、
「なぜ」に適切に答えるよりはるかに簡単。
何か命題が与えられた時にそれが証明できなければ「なぜ」と問えばよい。



ここまでは記号処理的な話だった。
話をベイジアンネットに置きかえるとどうなるか。
大脳皮質はおそらくダイナミックベイジアンネットだが、
第一歩としてダイナミックではない、普通のベイジアンネットで考えてみる。

他人の「なぜ」に対する答えを考えるメカニズムは、
私にとってあまり重要でない。
それはおそらく経験で獲得される高次な機能なので、
脳が持つの汎用的な知識獲得機能が再現できれば
自動的に獲得されるだろう。

それよりは、脳にアプリオリに作り込まれている、
「なぜ」という素朴な情動が発生する機構を解き明かす方が重要である。

1つの案としては、観測データが与えられた時、
そこから推定される隠れ変数の値と観測データとの同時確率がほぼ0であれば、
自分の知識で説明のつかないことが起きていることを意味するので、
そのときに「なぜ」という情動を発生させればよい。

まあ、これはあくまで1つ案で、他にもいろいろ考えられるだろう。

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