トルクアンプの原理

東京理科大の近代科学資料館の
アナログコンピューター展を見てきました。

『計算する器械たち ―アナログコンピュータ展―』
2014年 6月19日(木) ~ 8月8日(金)
近代科学資料館

期間中毎日、微分解析機の実演が 14:30 からあります!

微分解析機は、展示パネルや学生さんの説明だけだと原理が分かりにくいと思うので、
予習していった方がよいと思います。

こちらに和田英一先生による詳しい説明があります。
http://museum.ipsj.or.jp/guide/pdf/magazine/IPSJ-MGN520316.pdf

微分解析機の機構のうち、積分器の原理は見たまんまでわかりやすいです(図3)。

もう1つの重要な機構がトルクアンプというものです(図4)。
積分器が出力する非常に弱い力の回転を、回転速度はそのままに
力を大きく増幅して伝える機構です。

そんなものがあり得るのかとかなり驚きました。
ギアや滑車を使って強い力を出す場合は、
入力側の移動量が出力側よりも大きくなるのが普通ですよね。

トルクアンプはそうではありません。移動量は同じです。
ただし、トルクアンプ用モーターというのが接続されていて、
それが出力側にエネルギーを供給します。

トルクアンプの原理は、説明を読んでもわかりにくいのですが、
頭の体操だと思って理解してみました。
以下、私の理解のもとに言葉を足して説明しなおしてみます。
(下図参照。)
File:Diagram of the basic workings of a torque amplifier.jpg - Wikipedia, the free encyclopedia

左右のドラムはトルクアンプ用モーターに接続され
それぞれ逆方向に一定速度で回転しています。
入力シャフトが回転していないときは、
2つの摩擦ドラムに巻き付いているロープはすべって動きません。
入力シャフトが右から見て時計方向にわずかに回転すると、
入力アームが連動して回転し、左のロープをドラムに締め付けます。
この摩擦力でトルクアンプ用モーターの力が出力アームに伝わり、
出力アームに連動している出力シャフトを強い力で回転させます。
出力シャフトの角度が入力シャフトと同じになるとロープはゆるみ、
出力シャフトの回転は止まります。

入力シャフトが反時計方向に回転する場合は右のロープが摩擦ドラムを締め付け、
同様にして出力シャフトを同じ方向に回転させます。

定性的な動作はこれで理解できたものの、
こんなものが本当にアナログ計算に使えるほど高精度で動いていたとは、
まだ信じられないですね。
おそるべきロストテクノロジー。
入力から出力への回転が伝わるのにタイムラグはないんだろうか、
など疑問は尽きません。

和田英一先生のブログには他にもいろいろ微分解析機に関する情報があるようです。
パラメトロン計算機


ところで、入力シャフトが回転していないとき、
出力シャフトに力が加わるとどうなるかというと、
微小角度回転すると摩擦ドラムを締め付けられ、
逆方向に引き戻されます。

つまり、入力から出力へは回転が伝わるが、
出力から入力へは伝わらないような巧妙なしくみになっているようです。

トランジスタもシナプスも出力側の情報が入力側に伝わらないと思います。
複雑な多段の情報処理をするためには、
このような一方向の情報伝達機構がないと不便、ということでしょうね。

複雑な多段の情報処理にもう1つ必須なのが、ノイズ除去の機構です。
微分解析機は、残念ながら演算のたびにノイズが蓄積してしまいます。
一方、トランジスタを使ったデジタル回路は、
応答の非線形性のおかげで演算のたびにノイズが指数関数的に減少するという
うまい仕掛けになっており、これのおかげで大規模化してもちゃんと動作します。

脳はアナログコンピューターですが、
何らかのノイズ除去の機構が入っているのではないか、と思っています。

コメント

No title

前障は、私が考えているモデルでは扱っていません。

Wikipedia には
「大脳基底核の一部に数えられることもあるが、現在では機能的には関わりは薄いと考えられている。」
と書かれていますね。
「前障が意識現象の最も重要な構成要素であるという考えを示した。なお一般にはまだあまり支持されているとはいえない。」
ともありますね。
ということで、いまのところ重視していないです。


「意識の統合情報理論」はこれですね。
「Integrated information theory - Wikipedia, the free encyclopedia」
http://en.wikipedia.org/wiki/Integrated_information_theory

全然理解してませんけど、知能の高いロボットを作る際に
役に立つような話ではないなあ、と思ってます。

No title

いつも素早い回答ありがとうございます。
なるほど、早くBESOMさんに質問してみたいです笑。

ところで最近ネットでこのような記事を見ました。
http://science.slashdot.jp/story/14/07/08/0859246/%E8%84%B3%E3%81%AE%E5%89%8D%E9%9A%9C%E3%81%AB%E9%9B%BB%E6%B0%97%E5%88%BA%E6%BF%80%E3%82%92%E4%B8%8E%E3%81%88%E3%82%8B%E3%81%A8%E6%84%8F%E8%AD%98%E3%82%92%E5%A4%B1%E3%81%86%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E7%99%BA%E8%A6%8B%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B
ここでは”前障に電気刺激を与える”と書いてあるのですが、Wikipediaで前障の記事を見たところ、”大脳基底核の一部に数えられることもある”書かれてあります。一杉裕志さんの強化学習を行う大脳基底核には前障は含まれていないと考えていいでしょうか?

あともう一つ、ジュリオトノーニさんの「意識の統合情報理論」について一杉さんはどのように考えているか何かあればお聞きしたいです。毎回大切な時間を割いての回答ありがとうございます。

No title

クオリアの問題は、私にとっては優先度の低い問題です。

気になる人は「人間のような知能を持ったロボット」ができたあとで、そのロボットにクオリアがあるかどうか聞くとよいと思います。「ある」と返事する場合も「ない」と返事する場合も、そのロボットの脳内状態を調べることで、クオリアの研究は大きく進展するとお思います。

No title

以前質問した者です。素早い回答本当にありがとうございました。とても嬉しかったです。
また質問させていただきます。

人間の脳は感覚質(クオリア)を概念獲得しましたが、BESOMではできそうでしょうか?できそうだとしたらどのようにできるのでしょうか?
私は人間が感覚質というものの性質をなぜ知ることができるのか(まるで脳が感覚質にアクセスしているかのように)に興味があります。

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