講演予定:「脳は計算機科学者に解明されるのを待っている - 機械学習器としての脳 - 」

業績が少ないのに大変おこがましいのですが、
名古屋大で開かれる言語処理学会第19回年次大会(NLP2013)にて、
2013年3月13日(水)に招待講演として呼んでいただきました。

下記のタイトルと内容で講演します。

タイトル:
「脳は計算機科学者に解明されるのを待っている
- 機械学習器としての脳 - 」

概要:

脳の情報処理機構は正確には分かっていないことも多いですが、
正確でなくてよければ実は膨大なことが分かっています。
計算機科学のセンスのある人間が脳に関連する分野の基礎的な知識を持てば、
脳の機能と性能を計算機上で再現させることは可能であると私は思います。

大脳皮質は脳の表面にある厚さ 2mm 程度の薄い組織で、
ヒトの高度な知能に最も深く関与しています。
大脳皮質は領野と呼ばれる約50個の領域に区分けされており、
今日では、どの領野がどのような機能を持っているかについては
おおよそ分かっています。
領野ごとに、視覚、聴覚、運動制御、行動計画、言語理解など
様々な機能が担当されています。

脳の様々な高次機能が、ほぼ同じ解剖学的構造を持つ
たった50個程度の領野のネットワークで実現されているというのは、
大変不思議なことです。
しかし逆に言えば、大脳皮質の基本的な動作原理さえ分かれば、
人間の知能を人工的に再現できる可能性が出てくることになります。

その手掛かりはすでに得られています。
最近、複数の計算論的神経科学者が、
「大脳皮質の本質的メカニズムはベイジアンネットである」という
考えにもとづいたモデルを提案しています。
大脳皮質に関する膨大な知見が、ベイジアンネットを核としたモデルにより
急速に統一されつつあります。

大脳皮質以外の基底核・海馬・小脳などの重要な組織についても、
機械学習器に見立てた計算論的モデルの構築が進んでいます。
個々の組織のモデルを組み合わせ、脳全体のモデルが構築されれば、
人間のような知能が実現されるでしょう。

そのためにいま不足しているのは、
神経科学実験のデータや計算機パワーよりもむしろ
計算機科学のセンスを持った人材です。
神経科学的知見をヒントにして機械学習アルゴリズムを
脳の性能に近づくように改良できる数学的センスを持った人材、
複雑なアルゴリズムを実装して脳の様々な機能を再現させる
プログラミングスキルを持った人材が、
圧倒的に不足していると私は考えています。

参考URL:「脳とベイジアンネット」
http://staff.aist.go.jp/y-ichisugi/besom/j-index.html

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