近況報告

先日の全脳アーキテクチャシンポジウムのときの講演資料が公開になっています。
第1回 全脳アーキテクチャシンポジウムを開催しました | 全脳アーキテクチャ・イニシアティブ

私は最近の進捗について簡単にお話しました。
大脳皮質ベイジアンネットモデルの実用化に向けて

Noisy-OR を使った大規模ベイジアンネットの実用化に向けた
研究開発の道筋はかなりはっきりしてきましたが、
アルゴリズムの導出・実装・調整にはそれなりに手間暇がかかります。
人工知能ブームのせいで機械学習が得意な人材の確保の見込みがたたないので
最近は並行して別のアプローチの研究も進めています。

別のアプローチとは、資料にある「定性的ベイジアンネット」というもので、
ネットワークの状態を最適化するというベイジアンネットの特性は残しつつも、
記号処理に近い動作をします。
大規模機械学習特有の黒魔術的困難さを回避して、
脳の様々な認知機能を手軽にモデリングできる道具にしようとしています。

定性的ベイジアンネットは、条件付確率の0と非0だけを区別するものです。
パラメタのデータからの学習は今のところ考えておらず、
条件付確率表はすべて手で記述します。
定性的ベイジアンネットのプロトタイプは prolog で書いていましたが、
いま Java でもっと高機能なものを作り始めています。

私はこれまで、視覚情報処理、言語処理、運動制御、思考など様々認知機能が
ベイジアンネットで実現できそうなことを示す模式的モデルを
パワーポイントの絵で公開してきましたが、
今まではまさに「絵に描いた餅」でした。
しかし定性的ベイジアンネットを使うことで、
小規模ながら本当にモデルを動かせるようになると思います。

モデルが実際に動けば、大脳皮質がベイジアンネットであること、
ベイジアンネットを使わなければ脳の多くの高次機能の実現は
難しそうであることを、
多くの人にリアリティをもって感じてもらえると思います。